相続土地国庫帰属制度の運用状況【2026年最新】申請件数・承認率・却下理由

2023年4月施行の相続土地国庫帰属制度の最新運用状況(2025年9月末時点の申請4,374件・帰属2,039件・承認率約47%)と地目別データ、却下理由を法務省統計から解説。山林での申請実情まで詳しくまとめました。

はじめに

2023年(令和5年)4月27日に施行された「相続土地国庫帰属制度」。相続で取得した「要らない土地」を一定の条件のもとで国に引き取ってもらえる画期的な制度として、山林所有者からも大きな注目を集めました。

制度開始から約2年半が経過した2026年現在、実際の申請件数・承認率・却下理由などの運用実績が明らかになってきています。

本記事では、法務省の最新統計(2025年9月末時点)をもとに、相続土地国庫帰属制度の運用状況を詳しく解説。特に山林での申請実情について、申請数・承認率・却下傾向を整理しました。これから制度の利用を検討している方の判断材料として活用ください。

相続土地国庫帰属制度のおさらい

制度の概要

相続土地国庫帰属制度は、相続または遺贈(相続人に対する遺贈)によって取得した土地の所有権を、申請により国庫に帰属させることを可能とする制度です。

対象になるのは、相続で取得した土地に限定されており、売買で取得した土地や法人名義の土地は対象外となります。

制度の詳しい内容は「国庫帰属制度とは?山林を国に返す方法と条件」でも詳しく解説しています。

申請から承認までの流れ

  1. 事前相談(法務局)
  2. 申請書類の作成・提出
  3. 審査手数料(14,000円)の納付
  4. 実地調査
  5. 承認・不承認の決定
  6. 負担金(原則20万円)の納付
  7. 国庫帰属

申請から承認までには6ヶ月〜1年程度の期間が必要とされています。

【最新】申請件数の推移(2025年9月末時点)

法務省が公表している最新統計によると、2025年9月30日時点の運用状況は以下のとおりです。

項目 件数
申請件数(累計) 4,374件
帰属件数(承認・処理済) 2,039件
却下件数 71件
不承認件数 数十件〜(詳細非公表)
承認率 約47%

出典:法務省 相続土地国庫帰属制度の統計

申請件数の傾向

制度開始から1年(2024年4月末)時点での申請件数は約1,900件でしたが、その後の1年半で約2,500件上積みされており、年間2,000件を超えるペースで申請が入っています。相続登記義務化(2024年4月)と連動して認知度も高まっていると考えられます。

地目別の申請・帰属状況

地目別の申請件数

地目 申請件数 構成比
田・畑(農地) 1,688件 約39%
宅地 1,520件 約35%
山林 687件 約16%
その他 479件 約11%

地目別の帰属承認件数

地目 帰属件数 対申請比
宅地 743件 約49%
農用地(田・畑) 658件 約39%
森林(山林) 128件 約19%
その他 510件 約107%(他案件混在)

山林の承認率が低い理由

山林は申請687件に対し、承認された「森林」カテゴリは128件。承認率は約19%と、宅地(49%)・農用地(39%)と比較して著しく低いことがわかります。

これは、山林特有の以下のような要因が影響しています。

  • 境界未確定:境界杭がない・境界が明らかでない山林が多い
  • 崖地・急傾斜:通常の管理に過分な費用を要する地形
  • 立木の管理状況:植栽木のうち主に経済的目的で管理されていない等
  • 道路付け不良:管理のための進入路が確保できていない

却下71件の内訳と理由

法務省が公表している却下71件の理由は以下のとおりです。

却下理由 件数 割合
添付書類の不備(法第4条第1項第2号) 34件 約48%
現に通路の用に供されている土地(施行令第2条第1項) 18件 約25%
境界が明らかでない土地(法第2条第3項第5号) 16件 約23%
その他 3件 約4%

却下の代表パターン

1. 境界未確定の山林(16件)

隣地との境界が明らかでない山林は、そもそも申請段階で却下されます。山林では境界杭がないケースが多いため、申請前の境界確認作業が必須です。

境界問題については「山林の境界がわからない時の対処法」をご覧ください。

2. 通路に使われている土地(18件)

近隣住民の通行路として現に使用されている土地は対象外です。里道として事実上機能している山林はこのパターンに該当します。

3. 書類不備(34件)

最多の却下理由。戸籍謄本・登記事項証明書・土地図面などの必須書類の不足や記載不備で却下されています。司法書士等の専門家への相談で回避可能です。

不承認(却下後の実地審査で不承認となるケース)

却下が「申請要件を満たさず門前払い」されるケースなのに対し、不承認は実地調査の結果、「帰属後に国の管理に過分な費用を要する」と判断されるケースです。

山林が不承認になりやすい条件

  • 明らかな土砂崩落リスクがある
  • 不法投棄物が放置されている
  • 倒木が多数あり、除去に多額の費用がかかる
  • 過去に鉱物採掘が行われていた
  • 地下埋設物が存在する
  • 立入禁止の指定区域に含まれる
  • 周辺住民から苦情が頻発している

事前相談の段階で「申請しても不承認になる可能性が高い」と言われたケースでは、申請前に問題点の除去(ゴミ撤去・境界確定等)を行うことが有効です。

山林で制度を利用する際の実務ポイント

申請前の準備

1. 登記簿と現況の確認

登記地目が「山林」でも、実際には「雑種地」や「原野」に近い状態の土地もあります。現況を正確に把握し、地目変更が必要な場合は事前に手続きを行います。

2. 境界の確認・測量

法第2条第3項第5号に該当しないように、境界確認を先に済ませることが重要です。土地家屋調査士への依頼で20万〜100万円程度の費用がかかりますが、却下リスクを大きく下げられます。

3. 立木・雑物の整理

倒木、放置された工具・建材、不法投棄物などは申請前に除去しておきます。

4. 事前相談の活用

法務局(管轄の法務局本局)では、申請前の事前相談を受け付けています。形式的な適合性と、実地で問題がないかのヒアリングを受けられるため、申請前に必ず利用すべきです。

負担金の目安

山林の場合、負担金は原則20万円ですが、一定の条件を満たす山林では面積に応じた負担金となる可能性があります。2026年時点の計算方法は法務省令で定められています。

合算申請の活用

複数の土地を合わせて申請することで、負担金の割引を受けられる場合があります(隣接する複数筆の山林など)。法務局への相談で適用可否を確認してください。

山林承認率19%から見える現実と対策

山林の承認率19%は決して高い数字ではありませんが、「準備さえすれば通る」というのが実情です。却下71件中34件(約48%)は書類不備であり、16件は境界未確定——つまり事前準備でクリアできる問題が大半を占めています。

つまり、専門家の助言を受けて準備を整えれば、承認率は大きく改善できます。

それでも制度が使えない場合の選択肢

事前相談の段階で「不承認になりそう」と言われたり、負担金が高額になる場合は、以下の代替手段も検討しましょう。

1. 民間売却

山林専門の売買プラットフォームを利用すれば、買い手と直接マッチングできます。近年はキャンプ・アウトドア需要で個人買い手も増えています。

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2. 相続放棄

相続発生から3ヶ月以内であれば、相続放棄も選択肢となります。ただし他の財産も含めて放棄することになります。詳しくは「山林の相続放棄は可能?メリット・デメリット」をご覧ください。

3. そのまま保有

固定資産税が低額な山林は、保有コストが小さいため、無理に手放さずに持ち続ける選択も現実的です。

制度の今後の動向

運用改善への期待

制度運用が開始されて2年半、法務省は運用実績を踏まえた検討会・意見聴取を進めています。2026年以降、以下のような運用改善が期待されています。

  • 負担金算定方法の明確化・合理化
  • 山林特有の基準(境界等)の緩和
  • 事前相談の拡充(オンライン化)
  • 書類様式の簡素化

相続登記義務化との連動

2024年4月から施行された相続登記の義務化(違反時は10万円以下の過料)により、今後は登記未了の山林相続も減少していきます。相続登記後の処分選択肢として国庫帰属制度の利用が増えると予測されています。

相続登記義務化については「相続登記の義務化 — 罰則と対処法」で詳しく解説しています。

よくある質問(Q&A)

Q1. 山林だけの申請でも認められますか?

A. はい、山林単独の申請も可能です。ただし、上述のとおり境界確認や立木の整理など、山林特有の準備が必要です。

Q2. 申請してから結果が出るまでどのくらいかかりますか?

A. 通常6ヶ月〜1年程度です。複雑な案件(境界争い等)では1年以上かかる場合もあります。

Q3. 不承認になった場合、負担金は返金されますか?

A. 不承認の場合、負担金は納付しません(納付は承認後)。ただし、審査手数料14,000円は返金されません。

Q4. 山林の負担金はいくらになりますか?

A. 原則20万円ですが、面積等に応じて追加費用が算定される場合があります。事前相談で概算を確認できます。

Q5. 他の相続人の同意は必要ですか?

A. 共有山林の場合、共有者全員での申請が必須です。一人でも反対者がいると申請できません。

まとめ

相続土地国庫帰属制度の2026年最新運用状況をおさらいします。

  1. 申請件数:2025年9月末で4,374件(山林687件・約16%)
  2. 帰属件数:2,039件(全体承認率約47%、山林は約19%)
  3. 却下71件の主因は書類不備(48%)、境界未確定(23%)、通路使用(25%)
  4. 山林承認率が低い要因は境界未確定・崖地・立木管理など
  5. 事前準備を丁寧に行えば承認率は大きく改善
  6. 制度が使えない場合は民間売却・相続放棄・そのまま保有が選択肢

相続した山林の処分にお悩みの方は、国庫帰属制度の事前相談と並行して、民間売却の可能性も検討することをお勧めします。

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